特記2
:の続き
拡大培養を行った菌を使用した菌床は、菌の活性が元菌より弱くなって行く場合が殆どです。また拡大培養を続けた場合、菌そのものが元菌の組成とは少々違ったものとなる場合もあると感じます。

その一例として、元菌を使用した菌床から収穫された茸と、拡大培養した菌を使った菌床から収穫された茸とでは形の面で大きな違いが現れます。拡大培養を続けた菌からは、笠が変形した茸が多く得られたり、大きさも元菌を使用した菌床と比較すると小さいものが多くなります。

(オオヒラタケ系やヒラタケの茸は判り難いですが、笠がしっかりしている種類だとすぐに判ります。余談ですが、この事に関しては夕張メロンに似ていると思います。夕張メロンの種から種苗を採り接木し、その苗を育てて果実を収穫しても、種苗メーカーが販売している苗から育てた果実には、甘味、酸味、色など全てにおいて到底及びません。)

このような茸の収穫事例は、培地の菌床の菌が変異している、弱っている為に発生しているものと思われます。菌自体に問題がある菌床で育てた個体を、私的には決して良いとは思えません。

もう一つは、拡大培養を続けて行うと菌の活性が一定化していない、と言った弊害が現れます。夏場の高温期にはロットのロスも増え歩留まりも悪くなって行きます。これは菌床の菌が安定化していないことに最大の問題があると考えます。

菌の活性に問題がある場合、例えば基礎添加剤に一般的なフスマのみを使用した菌床であれば菌は廻りますが、幼虫の成長を重視した添加剤を加えると菌が廻りにくくなる現象が現れます。

このような拡大培養を続けた菌で製造された菌床を、崩してビンに詰める二次発菌の際には菌が上手く廻らず、夏場は特にカビにやられる頻度が増します。

拡大培養を行うと元菌の代金が掛からない訳ですし、添加剤もフスマのみですから、製造した菌床の価格を低く抑えることが出来ます。価格の安い菌床(特に一次発菌の菌糸ビン)はこの手法が用いられている場合が多いと思われます。

このような菌床を使用した場合、全てにおいてシビアなグランディスの大型作出飼育(特にギネス級の作出)においては、菌床の均一性と菌の活性化が一定でない限り作出は容易ではなく、むしろ殆ど不可能に近いと判断しています。

また経験則として、一般に市販されているフスマのみの菌床による飼育も、大型個体(特にギネス級)の作出は非常に困難であると感じています。